遺伝子から何がわかる?遺伝子検査で認知症の発症やリスクを予測できるのか?

遺伝子から何がわかる?遺伝子検査で認知症の発症やリスクを予測できるのか?

タイトルの「遺伝子検査で認知症の発症やリスクを予測できるのか」について最初に結論を言うと、予測できる場合もあれば予測できない場合もあります。

結局はどっちなんだと言いたいと思いますので、この答えについて分かり易く説明したいと思います。

遺伝性疾患の原因

遺伝子が関係する疾患(病気)の原因として、以前の記事で単一遺伝性疾患多因子遺伝性疾患について解説しました。

単一遺伝子疾患はたった一つの遺伝子に変化が起こることで発症する疾患の総称です。

有名な疾患で言うと、遺伝性の乳がんはBRCA1という遺伝子に病気と関わる遺伝子変化があると発症することが知られています。

実際には遺伝性の乳がんの発症に関連する遺伝子は他にも複数分かっています。

一方で多因子遺伝性疾患はたくさんの遺伝因子とたくさんの環境因子が関係して起こる疾患のことをいいます。

例えば、高血圧は原因となる遺伝子もたくさん存在しており、また生活習慣の乱れも高血圧を招く大きな要因です。

つまり、一つ一つの遺伝子が高血圧に関与するリスクは低く、環境的な要因などたくさんのリスク要因が複雑に絡み合って発症する病気とも言えます。

認知症は単一遺伝性疾患?多因子遺伝性疾患?

では認知症は 認知症は単一遺伝性疾患?多因子遺伝性疾患? のどちらなんでしょう。

実は認知症は単一遺伝性疾患でもあり多因子遺伝性疾患でもある病気なのです。

ひとえに認知症といっても種類がありますので、以前の記事を読んでいただければと思います。

認知症の中で約60%を占めるのがアルツハイマー型認知症で単一遺伝性疾患の原因遺伝子としてAPP遺伝子、PSEN1遺伝子、PSEN2遺伝子の3つが知られています。

これら3つは若年性認知症の原因遺伝子であり、病的な遺伝子変化を持っていると生涯のうちにほぼ100%の人がアルツハイマー型認知症を発症することが知られています。

ただ、この遺伝子の変化を持っている人はアルツハイマー型認知症の方の1%以下と稀なケースです。

多因子遺伝性疾患の原因遺伝子としてApoE(アポイー)遺伝子が良く研究されており、 ApoE のε4のタイプを持っていると アルツハイマー型認知症のリスクが高くなることが分かっています。

ただ、 ApoE のε4を持っているからと言って必ずアルツハイマー型認知症になるわけではありません。普段の食事や運動、人との接触などライフスタイルも関係しています。

その他にも多数の関連遺伝子が見つかっていますが、一つ一つが認知症へ及ぼすリスクは小さいことが報告されています。

まとめると

ここまで説明をしてきましたが、何となく理解気づいた方もいるかもしれませんが結論について詳しく解説します。

認知症には単一遺伝性のものと多因子遺伝性のものがあります。

単一遺伝性の認知症であれば発症を予測できるということになります。

一方で多因子遺伝性のものは関連する遺伝子も多数あれば、環境要因も大きく影響する為、単純に予測することは難しいといえます。

認知症の多くは多因子遺伝性ですので、認知症のリスクとなる環境要因(例えばタバコやお酒)を避けるななど、生活習慣を見直すなどが認知症の予防に繋がることが知られています。

最近では初期の状態やそれよりも前から認知症の予防をすることがとても重要性であることが言われています。