マイクロサテライト不安定性検査で陽性だとなぜキイトルーダが適用となるか?

マイクロサテライト不安定性検査で陽性だとなぜキイトルーダが適用となるか?

マイクロサテライトとはゲノム上で短いDNA配列が繰り返し並んだ場所があります。

このような場所がゲノム上の様々な場所に散りばめられています。

人のDNAは頻繁に損傷を受けていますが、それを修復する機能が備わっており損傷を受けてもすぐに修復されています。

しかし、DNA配列が繰り返し並ぶような場所では、間違って修復してしまうことがあります。

DNAの修復に関係する遺伝子に変化が起こると、修復がうまく行われなくなり、そのDNA配列が不安定な状態になります。

つまりマイクロサテライトに不安定な状態が生じていないかを調べる検査がマイクロサテライト不安定性検査です。

詳しくは以前の記事に記載してあります

DNAの修復とがんとの関係

がん細胞は様々要因により、DNAに損傷を受け、その損傷が幾重にも蓄積することで細胞の分裂や増殖の制御が効かなくなることで発生します。

つまり、DNA修復関連遺伝子に変化を先天的にもしくは後天的に持つことによってマイクロサテライト不安性が生じやすくなり、そのことがそのままがんの発生につながるわけではありませんが、マイクロサテライト不安性が高い組織はがんが発生しやすい状態とも言えます。

免疫チェックポイント阻害薬とは

キイトルーダ(ペムブロリズマブ)は「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれる薬の1つです。

チェックポイントとは免疫が必要以上に働かないようにチェックする(検問所)という意味で使われます。

細菌やウイルスが侵入、がん細胞が発生するとこれら病原体を排除しようと免疫細胞が活性化します。

免疫が活発になることは大切なのですが、活発になり過ぎると自らの健康な細胞も傷つけてしまうことになるので、私たちの体はチェックポイントで免疫細胞にブレーキをかけて、免疫のバランスを維持します。

ところが、がん細胞はこの免疫のチェック機能を逆手にとって、がん細胞を攻撃する力を抑え込み、たくみに免疫から逃れて生き延びようとします。

免疫チェックポイント阻害薬はこの生き延びようとするのを邪魔する薬です。

キイトルーダの作用

では、免疫チェックポイントとはどのようなメカニズムで働くのかを説明していきます。

免疫機能が正常に働いている状態では「T細胞」という免疫細胞が主にがん細胞を攻撃します。

一方で免疫が過剰に働かないようにするためT細胞はPD-1と呼ばれる抑制スイッチが備わっています。

がん細胞はこの抑制スイッチを利用して、免疫細胞からの攻撃を逃れようとします。

そこでがん細胞はT細胞にある抑制スイッチ(PD-1)をオフにできるPD-L1と呼ばれるものを作り出しT細胞に攻撃されないようにするのです。

このように、PD-L1をもつがん細胞は免疫から逃れることで増殖が可能となります。

そのような仕組みから考えだされたのが、ここで説明するキイトルーダ(免疫チェックポイント阻害薬)となります。

キイトルーダはT細胞のPD-1を保護する働きであり、がん細胞がもっているPD-L1によって抑制されないようにします。

キイトルーダによってPD-L1を持っているがん細胞でもT細胞の攻撃から逃れることができなくなるという仕組みです。

マイクロサテライト不安定だとなぜ免疫チェックポイント阻害薬が効くのか

先ほど、マイクロサテライト不安性が高い(MSI-H)組織はがんが発生しやすい状態と説明しました。

免疫チェックポイント阻害薬は、遺伝子に入った傷が多いがんほど効きやすいのです。

遺伝子は体内のタンパク質を作るための設計図であり、本来、私たちの体は、正常な遺伝子情報をもとに正常なタンパク質を作っています。

ところが、何らかの原因で遺伝子に傷がつき変化を起こすと、その変化した遺伝子をもとにタンパク質が作られるため、本来は体内に存在しないはずの異常なタンパク質が作られることになります。

免疫細胞は異常なタンパク質を異物と見なして攻撃することから、異常なタンパク質を作っている細胞は排除されます。

実は、私たちの体は毎日たくさんの遺伝子変化が生じ、修復を繰り返していますが、一部は見逃され5,000個ほどのがん細胞が作られていますが、免疫の働きによって排除されています。

しかし、異常なタンパク質が作られていてもそれががん細胞の表面に出ていなければ免疫細胞が攻撃することができません。

一方で異常なタンパク質が細胞の表面にたくさん出ていると、先ほど説明したように免疫細胞を抑制するスイッチをがん細胞の異常なタンパク質が抑えこみ、攻撃から逃れるようとします。

逆に言えば、異物がたくさん出ているほど、PD-L1とPD-1が結合することをブロックさえすれば、免疫細胞の攻撃力が発揮されることになります。

つまりチェックポイント阻害薬が効果を発揮するのは、がんと認識できる異常タンパクが多く存在している、つまり、遺伝子の修復がうまくおこなわれていない(マイクロサテライト不安定性が高い)状態であると異常なタンパク質が作られやすくチェックポイント阻害薬が効きやすいとういことになります。