分子標的薬とはどのような治療法なの?これまでの抗がん剤との違い
mRNAワクチン、ゲノム治療薬、抗体医薬など新しい種類の薬が次々と登場してきました。
mRNAワクチンと聞くとみなさん、コロナのワクチンを思い浮かべるのではないでしょうか?
実はmRNAワクチンはもともとがんの治療薬として開発されていた技術なんです。それを、ころなのワクチンとして応用したことによって早期にワクチンの開発ができたのです。
今回はその中で分子標的薬という薬について解説をしていきます。主にがんの治療薬として使われている薬です。
分子標的薬はどのような薬なのか?
がんの治療薬を考えてみると、これまでの抗がん剤の多くは、がん細胞だけでなく正常な細胞も攻撃してしまうので、重い副作用があることはみなさんご存じだと思います。
従来はがん細胞を死滅させることによって治療の効果を得てきましたが、近年、がんに関する研究が進み、がん細胞が増殖や転移をするのは、遺伝子に蓄積した様々な変化のよって生じた物質が悪さをしているためであることがわかりました。
つまり、悪さをする物質の働きを抑えることができるなら、がん細胞の増殖や転移が抑えられるはずです。こうした考え方から誕生したのが「分子標的薬」です。
分子標的薬の特徴
分子標的薬はがん細胞が増殖するために必要とする特定の分子(タンパク質、遺伝子など)をターゲットにしており、これら分子を狙い撃ちすることでがんの増殖を妨げたり、死滅させたりする薬です。
つまり、従来型の抗がん剤が、がん細胞だけではなく正常細胞も破壊してしまうのに対し、分子標的薬はがん細胞の増殖に関わる特定の分子に狙いを定めて攻撃したり増殖を抑えたりします。
正常な細胞へのダメージが少なく、副作用がまったくないわけではありませんが、従来のがんの治療薬に比べると、より患者さんの負担が少なくなっています。
個別化医療と分子標的薬
まず個別化医療について説明します。
従来から行われている医療では、診断された病名が同じであれば、同じ治療薬が投与されてきました。
例えば、がんの治療では、「肺がん」と診断されれば、肺がんの治療薬が、「乳がん」と診断されれば、乳がんの治療薬というようにがんの種類にあわせて治療薬が投与されてきました。
そこで、同じ病名であっても、それぞれの患者さんにあった治療ができないだろうか、という発想から生まれたのが個別化医療です。
近年、病気の原因や病態について遺伝子やタンパク質など分子レベルで解明が進むにつれ、同じ病気と診断された患者さんの中でも、実際には遺伝子やたんぱく質などの分子の違いにより様々なタイプの患者さんがいることがわかってきました。
そのような遺伝子やたんぱく質の違いを調べて、対応する治療薬が使われます。
このような治療薬の一つが、分子標的薬です。
分子標的薬の効果や副作用を調べる検査
このブログを読まれている方も体験したことがあるかもしれませんが、同じ薬であっても人によって効果や副作用に違いがみられます。
コロナのワクチンを思い浮かべてもらえば分かり易いと思いますが、摂取後に副反応が出る人もいれば、何もないでない人もいますよね。
このような、副反応を調べたり、治療薬や患者さんに効果があるかどうか、治療の前にあらかじめ検査があります。この検査のことをコンパニオン診断といいます。
すべての薬でコンパニオン診断ができるわけではありませんが、分子標的薬に関してはコンパニオン診断が行われるケースがあります。
例えばAという薬があった場合にコンパニオン診断でXさんとYさんにお薬の効果が期待される遺伝子変化があった場合にはAという薬はXさんとYさんの候補薬となり、一方でXさんにはAとういお薬は効果が期待できないということになります。これがコンパニオン診断です。
分子標的薬の種類
最後に現在までにどのような分子標的薬があるのか気になる方もいるかと思いますので、参考に代表的なものだけ紹介します。
保険適用されている薬もされていない薬も混載したか形での記載となっております。
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