単一遺伝性疾患とは?その特徴についてわかりやすく説明します

単一遺伝性疾患とは?その特徴についてわかりやすく説明します

前回は単一遺伝性疾患がどのように親から子へ伝わっていくのか、いわゆる遺伝形式について説明しました。

今回は単一遺伝性疾患の特徴について説明をしたいと思います。

単一遺伝性疾患はどれくらい知られているの?

単一遺伝性疾患は一つの遺伝子の機能や量の異常が起こることによって発症する病気です。これまでに約5000種類の疾患に単一遺伝子の異常が関与していると報告されています。単一遺伝性疾患は小児の領域で重要で、重篤な単一遺伝性疾患の頻度は新生児の約300人に1人とされています。

浸透率と表現度

単一遺伝性疾患の話の中で知っておく必要がある言葉として、浸透率と表現度という言葉がありますので詳しく説明したいと思います。

まず浸透率ですが、症状が出るか否かを示す言葉です。例を言いますとあなたが心臓の病気に関わる遺伝子の変化を持っていたとします、しかし生涯に渡って心臓病を発症するかもしれないし発症しないかもしれません。つまり親が心臓病を発症しており、その遺伝子があなたに受継がれたとしてもあなたは発症するとは限らないのです。つまり、発症するかの度合いが浸透率です。遺伝子の変化を持っていたら生涯の中で必ず発症する場合は完全浸透と言います。それ以外の場合は不完全浸透と言います。

次に表現度です。病気の症状はあるのですが度合いが違うことを言います。色素斑が出来る病気を例にします。同じ病気であってもある人は体中に色素斑が出来るが、ある人は腕だけにしか色素斑が出来ない場合があります。このように人によって症状の大小が違ことを表現度の差と言います。

両親は健康なのになぜ子供にだけ病気になったのか?

親は健康なのに子供にだけ遺伝性疾患が発症するケースがあります。なぜそんなのことが起こるのか疑問に思いますよね。要因としては新生変異、浸透率、モザイクの3つが考えられます。それぞれを説明していきます。

新生変異

新生変異はde novo変異ともいいます。何かといいますと、子供だけに起こった遺伝子の変化のことです。卵子と精子が受精してこどもの元となる受精卵が出来ます。受精卵は1つから2つ、2つから4つと倍々に分裂することでヒトを構成している細胞です。この分裂の初期に何らかの原因で遺伝子の変化が起こることで病気になります。卵子や精子が作られる過程で遺伝子に変化が起こることもあります。

浸透率

先ほど説明した通り、両親も同じ遺伝子の変化を持っているのですが浸透度の差により両親は病気があらわれず、子供にだけ病気があらわれたケースです。

モザイク

人は約37兆個細胞から出来ていると言われています。細胞が分裂した際に遺伝子の変化が起こるとその細胞が以降分裂していくと遺伝子の変化を持つことになります。一方、遺伝子の変化が入る前に細胞には遺伝子の変化はありません。つまり、遺伝子の変化を持っている細胞と持っていない細胞は混在している状態をモザイクといいます。つまりモザイクの割合によって病気の症状が異なってくることになります。モザイクの中でも卵巣になる細胞や精巣になる細胞が分裂途中に遺伝子の変化をもった状態を性腺モザイクといいます。

性腺モザイクだと何が問題かというこどもに遺伝子の変化が受継がれる可能性があるということです。卵巣や精巣に遺伝子の変化があっても体全体に症状が出るとは限りません。しかし卵子や精子には遺伝子の変化を持つことになりますので、50%の確率で受け継がれることになります。