認知症と遺伝は関係するのか?遺伝子からみる認知症との関係。

認知症と遺伝は関係するのか?遺伝子からみる認知症との関係。

「認知症」は病名ではなく、認識したり、記憶したり、判断したりする力が何らかの障害を受け、社会生活に支障をきたす状態のことを言います。

現在、認知症の患者数は高齢化社会とともに増加し、2025年には約730万人まで増加し、65歳以上の5人に1人が認知症になると推計されています。

認知症は決して珍しいことではなく身近なものです。

ただ、何も出来ないわけではなくライフスタイルを見直すことで予防が可能であり、予防の重要性をWHOもガイドラインで示しています。

そのような中で、今回は認知症と遺伝との関係を説明していきます。

認知症には種類がある

認知症とひとえに言っても、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など原因によって様々です。

その中でもアルツハイマー型認知症が全体の約6割以上を占めていることになります。

アルツハイマー型認知症の治療薬の開発の研究が多くされていますが有効な治療薬はまだありません。

しかし、普段の生活を見直すことで予防もしくは進行を遅らせることが出来ると言われています。

認知症の種類

アルツハイマー型認知症の原因

アルツハイマー型認知症は、βアミロイドという老廃物が脳に蓄積し、 神経細胞に障害を与えることが原因で発症することがわかっています。

前回の記事(多因子遺伝性疾患とは)でお話した通り、認知症の発症にも遺伝的な要因と環境的な要因が関係しています。

約95%は,高齢発症(65歳以上)であり,早発型(60~65歳)は5%と言われています。

アルツハイマー型認知症の早期発症の原因遺伝子としてAPP、PSEN1、PSEN2遺伝子が見つかっています。

これら遺伝子に病的な変化を持つと40歳~50歳前半で発症することが知られています。

ただ、これら原因遺伝子を保有している人の割合は稀です。

これら3つの遺伝子より強いリスク因子ではないのですがApoE遺伝子もアルツハイマー型認知症のリスク因子として広く知られています。

ApoE遺伝子もアルツハイマー型認知症

βアミロイドの脳への蓄積に関係しているタンパク質として血液中のコレステロールを運ぶ役割をしているアポリポタンパク質(ApoE)があります。

ApoEの設計図であるApoE遺伝子には3種類(ε2、 ε3、 ε4)の型があり、両親からどの種類を受け継ぐかによってタイプや認知症のリスクが異なってきます。

ε3を持っている人が一番多く、ε4、ε2の順になります。

アルツハイマー型認知症の発症リスクとしてはε3を基準とするとε2は予防的に働き、ε4はリスクを上昇させる因子となります。

ε4を2つ持つ人はε3を2つ持つ人に比べて発症リスクが最大約11倍になるという報告もあります。

ApoE遺伝子を検査する意義

ApoE遺伝子を調べることでご自身の認知症のリスク(体質)を知って予防に活かすという点ではメリットとかもしれません。

一方でまだ認知症を治療する薬がないことから ApoE遺伝子を検査することに対して、リスクを知って不安を助長するだけであり、遺伝が関係していることからご家族や子供にも影響する可能性があることから検査することを推奨しない方向です。

また、調べなければよかったと感じてしまう方もいるかもしれません。

ApoE遺伝子はリスク因子であった必ずしも認知症になる訳ではないですがもし検査を受けたいという意向があれば、必ず専門の医師に適切な説明を受けた上で検査することが大切です