単一遺伝性疾患と何が違うの?多因子遺伝性疾患の特徴について説明します
- 2020.06.05
- 遺伝子と発見
高血圧、心筋梗塞、糖尿病などの生活習慣病、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症、リウマチなどの免疫・アレルギー疾患、統合失調症、うつ病などの神経疾患、アルツハイマー病などの認知症、主に新生児期にみつかる口唇口蓋裂、先天性心疾患などの先天性疾患などが多因子疾患です。
多因子疾患は3人に2人が生涯で罹患するといわれているありふれた疾患です。
単一遺伝性疾患のように一つの遺伝子が原因となる訳ではなく、多因子疾患は複数の遺伝子とライフスタイルなど環境的な要因とが複雑に絡み合うことで起こることが特徴です。
多因子疾患についてもう少し詳しく説明していきたいと思います。
多因子遺伝性疾患(多因子疾患)とは
大まかにいえば原因となる一つの遺伝子が分かっている単一遺伝性疾患以外を多因子疾患と呼びます。
「多」という言葉が使われている理由は、たくさんの遺伝要因とたくさんの環境要因が関係して起こるという意味だからです。
よく知られているものとして糖尿病、高血圧、リウマチ、高脂血症、認知症などの生活習慣病があります。
多因子遺伝性疾患が発症するメカニズム
多因子遺伝性疾患はたくさんの遺伝因子とたくさんの環境因子が関係して起こると説明しました。
遺伝的要因が低くても環境的要因にたくさん暴露されれば発症することもありますし、遺伝的要因が高くても環境的要因への暴露がすくなければ発症しないこともあります。
つまり、加年とともに環境要因が蓄積していくことで、ある量を超えると病気が発症することを意味しています(図1)。
量的形質と質的形質
多因子疾患を説明する上で量的形質と質的形質という難しいキーワードが出てきますのでわかりやすく説明したいと思います。
まず形質という言葉が何を意味しているかと言いますと形質は観察できる特徴のことを言います。
例えば身長が170cmの人がいるとして、形質は身長のことを指します。
まず量的形質について説明したいと思います。
量的形質は連続した数値で表せるものです。先ほどの伸長もそうですが血圧やコレステロール値があてはまります。
例えば、血圧を上昇させる遺伝子の変化が10種類あったとします。
血圧を上昇させる遺伝子の変化をたくさん持っている方が当然、血圧が高いことになります。
下のグラフをみてもらうと血圧を上昇させる遺伝子の変化を持つ数が増えるほど血圧が高くなっているのがわかります。ここでは7個以上持っていると高血圧を発症することになります(図2)。
一方で質的形質とは0か1で表される性質のことです。例えば先ほどの血圧でいうなら、高血圧の人とそうでない人という関係が質的形質となります。
また認知症でない、認知症であるといった性質です。
なぜ質的形質と量的形質が多因子疾患と関係するのか
多因子疾患は複数の遺伝子が関係していると説明しました。
量的形質で血圧の説明をしましたが関連する遺伝子をどれだけ持っているかによって個体への表れ方が違ってきます。
そしてその表れ方は正規分布をします。
分かり易く説明すると、平均身長が170cmだとすると150cmの人と190cmの人が同じ位いることになります。
例えば身長が1つの遺伝子で決まっているとしたら、人は遺伝子を2つ持っています(一つは母親からもう一つは父親から受け継ぎます)ので身長に関係する遺伝子は「AA:二つ持っている人」「AB:一つだけ持っている人」「BB:一つも持ってない人」の3タイプになります。
そして割合はAA:AB:BBが1:2:1となります(図3)。
同じように身長に関係する遺伝子が2つあるとしたらそのタイプは1:4:6:4:1の割合になります。
3つ遺伝子があるとしたら1:6:15:20:15:6:1の割合になります。
10個遺伝子があるとしたら1:10:45:120:210:252:210:120:45:10:1の割合となり、さらに関係する遺伝子が増えると正規分布に近づいていきます(図4)。
つまり何を言いたいかというと、身長は一つの遺伝子だけで決まっているわけでなくたくさんの遺伝子が関係しており、またたくさんの環境要因にも影響(例えば、たくさんの栄養を摂取する)を受けます。
あたかも一つの遺伝子が遺伝して伸長を決めているかのように見えるということです。
父親と母親の身長が高ければ身長が高い子供が生まれてくる可能性が高いが、必ずしもそうではないということを難しく説明しました。一つの遺伝子だけで身長が決まるわけではないということです。
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