短時間睡眠体質のショートスリーパーとは?関連する遺伝子が発見
今回は少し違った内容をお伝えしようと考えています。みなさんの中には睡眠のことで困っている人やもっと短い睡眠で一日を眠気なく過ごしたいと思っていつ人がたくさんいると思います。
2017年度のノーベル生理学・医学賞が体内時計の分子メカニズムを解明した3人の米国人科学者、マイケル・ロスバッシュ、ジェフリー・ホール、マイケル・ヤングに与えられた。私たちの体内時計は、1日24・5時間の周期で動いています。
これを1日24時間の周期に合わせるために、光と食事の刺激で体内時計を日々リセットしています。
この体内時計は私たちの睡眠や覚醒(寝つきや目覚め)のタイミングを決定する非常に大事なシステムです。
体内時計の指令のもと、睡眠に限らず、体温、血圧、代謝、ホルモン分泌などほぼ全ての生体機能はおよそ24時間周期で変動しています。
この体内時計を形づくっているのが数多くの「時計遺伝子」です。体内時計をつかさどる遺伝子を特定したということでノーベル賞を受賞しました。
このように睡眠と遺伝子の関係も少しづつ解明されてきました。今回紹介するのはショートスリーパーに関係する遺伝子についてお話したいと考えています。
ショートスリーパーとは
ウキペディアには下記のように記載されています。
短い睡眠時間で健康を保っていられる人間のことであり、短眠者(たんみんしゃ)ともいう。一日の平均睡眠時間は
7-8時間程度が健康的とされるが、6時間未満でも生活できる人間がいる。ナポレオン、エジソンは4時間、フラン
ツ・ヨーゼフ1世は3時間[1]しか眠らなかったという説があるが、真偽のほどは不明である。立証されているショート
スリーパーでは、日本の芸能人である武井壮は、2時間の睡眠が通常の人の12時間睡眠に匹敵する程のレム睡眠の少
なさと言う特殊な体質の為、物心が付いてから4時間以上の睡眠を取ったことが無いと言うことが番組の検証で明ら
かとなっている。
出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ショートスリーパーに関係する遺伝子①
2019年9月25日にNeuronという科学雑誌に投稿された論文を紹介します。この論文は5世代にわたって4-6時間しか眠ることが出来ない短時間睡眠の家族の遺伝子を調べたところ男女を問わず全ての人にβ1アドレナリン受容体をコードするADRB1遺伝子にミスセンス変異(A187V変異)を発見したというものです。
ミスセンス変異とは本来作られるタンパク質は異なるタンパク質が作られるようになる遺伝情報の変化のことを言います。
A187V変異と記載がありますが、つまり多くの人はA(アラニン)というタンパク質が作られるのですが、ショートスリーパーの人はV(バリン)というタンパク質が作られるように変化したということを意味します。
このような遺伝子の変化がショートスリーパーに関係していることを示唆しているのです。
まったく予想外の遺伝子であったため、本当かどうか確かめるためにマウスのADRB1遺伝子に同じ変異を導入して調べると、予想通り、変異マウスの睡眠時間は全体で1時間ほど短かったそうです。
さらに、起きている時間は普通のマウスより元気に動くこともわかっり、人の睡眠行動を再現できたと報告されています。
ショートスリーパーに関係する遺伝子②
2019年10月16にScience Translational Medicineという科学雑誌に先ほどと同じ研究グループの別の遺伝子の突然変異が睡眠時間の短縮につながるという論文を発表しました。
今回は、父親と息子で睡眠時間が短い(父親平均5.5時間、息子4.3時間)家族を見つけ出し、両方に共通な遺伝子変異を調べた結果、Neuropepitide Sに対する受容体であるNPSR1遺伝子の206番目のアミノ酸がチロシンからヒスチジンに変化していることを特定しました。
そこで同じ変異をマウスに導入して、マウスの行動解析を行うと睡眠時間が1時間近く低下し、また活動的に動いている時間も1時間ぐらい増加することが分かりました。
見つかった遺伝子がショートスリーパーを導くメカニズムの説明は省略しましたが、このように遺伝子の変化がショートスリーパーといったような体質にも関わっているというのは興味深い話ですね。
遺伝子の異常イコール病気と考えがちですが人に有益な結果をもたらす遺伝子の変化もあることを知ってもらえたら少しでも遺伝の分野に興味を持って頂けるのではないかと思い今回紹介させてもらいました。
すこし内容が難しくなってしまいましたが、遺伝の研究は日々進歩しており多くのことが分かってきました。新しい情報をどんどん配信していきたいと思います。
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