知っているようで知らないがんと遺伝子の関係について説明します
現在、日本では生涯に何らかのがんになる人は二人に一人と言われています。
がんという病気は決して珍しい病気というわけではないのです。
がんに対する治療は手術療法、化学療法(抗がん剤など)、放射線治療方の3つが標準治療として行われています。
そのような中で近年の研究でがんに対する新しん治療法が登場しています。
その前に、なぜがんになるのか、遺伝子とはどのように関係しているのか、よくがん家系と聞くけどがんは遺伝するのといった疑問があると思いますので、この点に関して説明したいと思います。
そもそもどうしてがんになるの
ヒトの体は約37兆個もの細胞で出来ています。
細胞は通常、体や周囲の状態に応じて、ふえたり、ふえることをやめたりします。
細胞は自分と同じ細胞を作り出すことでふえるのですが、その際に誤って自分とは違う細胞を作り出してしまうことがあります。
そのような異常な細胞に対して体は排除しようとする仕組みを持っているのですが、その仕組みをすり抜けてしまうことがあるのです。
異常な細胞はふえることをやめたりせず、どんどん増え続けようとしていきます、これががんです。
がんと遺伝子の関係は
細胞の一つ一つには遺伝情報(遺伝子)がすべて含まれています。
細胞が増える際に遺伝情報をまるまるコピーすることで同じ情報を持った細胞が作られます。
しかし、この遺伝情報をコピーする際にコピーミスをしたり、紫外線やストレスといった内外の要因によって遺伝子に傷がつくと異常な細胞が作られることがあります。
ただし、1つの遺伝子に傷がついただけでは通常ががんになりませんが、いくもの遺伝子に傷がつくことが積み重なることで細胞の増殖を抑える遺伝子が正常に働かなくなりがん細胞となります。
つまり、遺伝子の変化が積み重なることで細胞増殖がONの状態になり続けたり、逆に細胞の増殖を抑える働きがOFFの状態になることでがん細胞が作られるのです。
細胞には2種類ある
少しややこしい話になるのですが、細胞には生殖細胞と体細胞があります。
生殖細胞は女性でいえば卵子、男性でいえば精子にあたります。つまり、生殖細胞に遺伝子の変化があると子供に遺伝する可能性があります。
一方、体細胞は皮膚や各組織を作っている細胞で何らかの要因で遺伝子に変化が起こっても次の世代へ遺伝することはありません。
がん家系とはどういうこと
みなさんのイメージですと家族や親せきにがんに罹った人が複数人いるとがん家系なのかなと思うと思います。
最初にお伝えした通り二人に一人はがんになるといわれています。
ですのでがんに罹った人が複数にいるからと言って必ずがん家系と限りません。
ただし、遺伝カウンセリングの中では家族や親せきの情報も大切な情報となりますので必ず家族や親せきのことは聞かれます(家系図の聴取と言います)。
なぜ、家系図の聴取を行うかというとがんの中には生まれた時から遺伝子に変化(生殖細胞に遺伝子の変化)を持っていて、がんになりやすい体質の方がいるからです。
遺伝子の変化は親から子へ伝わるため遺伝的にがんに罹患しやすい体質を持った家系ががん家系と言われます。
また、がんになりやすい体質の方が発症するがんは遺伝性腫瘍症候群と言われます。 特徴としては以下の通りとなります。
● 若くしてがんに罹患した方がいる
● 家系内に何度もがんに罹患した方がいる
● 家系内に特定のがんが多く発生している
● 乳がんの場合、両側でがんに罹患した方がいる
家系内で上記条件に当てはまったからと言って遺伝性のがんと決まったわけではなく、症状などによって診断される場合と遺伝子の検査によって遺伝子に変化が見つかることではじめて診断される場合があります。
なにも見つからないこともあります。
遺伝性腫瘍症候群と分かることで治療に役立ったり適切な健康管理により治療成績の向上が期待できる可能性があります。
ただし、がんになりやすい体質であることや将来子供にも遺伝する可能性があるなど心理的な不安に寄り添うため、がんの遺伝カウンセリングにおいてがんの遺伝に関する情報提供や遺伝子の検査について、遺伝子に変化が見つかった場合のがんに対するマネージメントなどを行っています。
次回はがんの分野における遺伝子の治療法を紹介したいと思います。
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